春宵胡蝶 - Spring Evening Butterfly
Sennzai
4:50月の端を溶かす 冷たい雫 指で掬って 濃紺の海が翳める 遠く忘れ去られた家 伽藍堂 満たす静寂 時が止まったままの部屋 慟哭が塗り潰す 白い壁 映し出すの あなたの姿 還らない 戻らない 事実を今日も胸に突き立て 希望刻んだドアには 蔦が絡まり 過ぎた月日を語る 傾き始めた屋敷に 棲みついた残照はなお眩しく 優しい春の歌 響いてた 海を渡り 故郷まで 今はただ寂しい 海鳴りだけ胸を突き刺す 探していた足跡が 攫われ途絶えたあの日 悪い夢ならば あぁ、醒めて、やめて 重なり合う 雨の鎮魂歌 もう慰めの言葉も失くして 夜明けに滲む 最後の日 朽ちてゆく真実は もう誰も知ることはない 永遠に鎖され 蝕まれ 傷んでも 幸せは確かに在ったのに 追憶は碧に沈み 終焉を拓く ねぇ、ねぇ、答えて 光がすべて焼き尽くす